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東京家庭裁判所 昭和47年(少ハ)27号 決定

少年 M・K(昭二八・一〇・二一生)

主文

少年を中等少年院に戻して収容する。

理由

本件申請の趣旨は、要するに、少年は昭和四五年六月三〇日東京家庭裁判所において、中等少年院送致決定を受けて福岡少年院に収容され矯正教育を受け、同四七年四月六日になつて仮退院を許されたが、仮退院当日両親のもとに帰住することを拒み、帰住途上保護者のもとから逃走し、長崎警察署に保護されて一旦保護者のもとに帰住したものの、就労の意思がなく再び家出して五日目に福岡市内で保護され、保護者のもとに帰宅したが、その際長崎保護観察所保護観察官より職業指導並びに家出に対する注意指導を受けたにもかかわらず、その後も働く意欲がなく約一箇月程徒食し、再び家の金を持出して家出し、放浪中一旦は下関警察署に保護されたものの、その後も福岡、佐世保、平戸等諸所を転々として放浪し、長崎市内を徘徊中長崎警察署に保護され、長崎啓成会に保護委託されたが働く意欲が全く認められない状態にあり、反省の色も見られず、両親も保護に自信を失つている有様で、今後保護観察による改善更正が困難であると思料されるので、本人を少年院に戻して再度矯正教育を受けさせることが必要であるというのである。

よつて判断するに、当裁判所の調査並びに少年の供述等によれば、少年が仮退院後保護観察官から指示された遵守事項に従わず、再三親許を離れて諸所を放浪し、勤労意欲が全く見られないのみか、注意されても反省の色が見られず、身柄を引渡された後も今後真面目に稼働する旨述べているものの、その真意は極めて疑わしく信頼に乏しい。

要するに、仮退院後の少年の行状、生活態度等に徴すれば、以前のように他人に対し粗暴な行動をとらなかつたという点を除いては、少年院における矯正教育の効果は殆んどあがつていないことが認められるので、申請の趣旨どおり再び少年を少年院に収容して、少年の再教育、殊に長年にわたる父子関係に基因する情緒障害の治療を施す必要があると思われる。

以上の理由で、本申請は正当であると認めるので、犯罪者予防更生法四三条一項、少年審判規則五五条、三七条一項、少年院法二条三項により主文のとおり決定する。

なお、少年院の種類については医療少年院が相当であることを処遇選択に際し勧告する。

(裁判官 高井吉夫)

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